不妊治療と仕事の両立:企業と従業員の認識ギャップを埋めるには
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ニュースの概要
特定非営利活動法人Fineなどが実施した国際共同調査「Fertility at Work Survey 2025」の結果が発表されました 。この調査は、働きながら不妊治療を受けている人々の実態と、企業側の支援状況との間に大きなギャップがあることを明らかにしています。特に日本では、不妊治療がメンタルヘルスに影響すると感じる人が多い一方で、職場でそのことを伝えにくいという文化的背景も浮き彫りになりました。
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特定非営利活動法人Fineが、イギリスの「Fertility Matters at Work」やフェリング・ファーマらと共同で実施した、世界5カ国(日本、イギリス、フランス、オーストラリア、ポーランド)を対象とする大規模な国際共同調査「Fertility at Work Survey 2025」の結果が発表されました。
この調査は、不妊治療を経験しながら働く「従業員」と、それを受け入れる「企業(雇用主)」の両方にアンケートを行い、そのギャップを浮き彫りにした非常に画期的なものです。主なトピックを詳しく見ていきましょう。
1. 「人生の重大事」という認識の致命的なズレ
調査によると、従業員のほぼ全員(97%)が不妊治療を「人生における重要な出来事」と捉えています。しかし、自分の職場がそれを重要だと認識してくれていると感じている従業員は、わずか27%に留まりました。これに対し、企業側の75%は「自社は重要性を理解している」と回答しており、企業側の「理解しているつもり」と従業員の「理解されていない」という実感の間に、48ポイントもの巨大な乖離が存在することが明らかになりました。
2. 退職リスクとパフォーマンスへの影響
仕事との両立の難しさは、深刻な人材流出を招いています。不妊治療を理由に「退職した、あるいは退職を検討した」と回答した従業員は全体の39%に上ります。また、69%が「治療が仕事のパフォーマンスに影響している」と感じており、その要因として身体的な副作用(67%)だけでなく、自信の低下(51%)や職場の人間関係への影響(50%)といった精神面・環境面の課題が挙げられています。
3. 日本における「沈黙」と「メンタルヘルス」の課題
日本特有のデータとして、不妊治療がメンタルヘルスに影響したと答えた人は84%と非常に高い数値を示しました。しかし、職場で誰にも治療のことを伝えていない「非開示率」は43%に達し、調査対象5カ国の中で最も高くなっています。職場に伝えない理由として、日本では「個人的な問題であるため(34%)」という回答が目立ち、私的な悩みを職場に持ち込むことを避ける文化的な傾向が、孤独な闘いを強いている現状が見て取れます。
4. 管理職研修の決定的な不足
従業員が治療を相談する相手の67%は「直属の上司」です。しかし、管理職に対して不妊治療支援の研修を実施している企業はわずか19%に過ぎません。現場のリーダーが適切な知識や共感を持って対応できていないことが、制度があっても使いにくい「空気感」を生む一因となっています。
何が起きたのか(ポイント整理)
- 従業員の39%が不妊治療を理由に退職または検討。
- 「人生の重大事」という認識について、企業(75%)と従業員(27%)で大きな乖離。
- 日本は「誰にも言わない」人が43%と最多。一方で84%がメンタルへの影響を実感。
- 管理職への研修実施率は19%に留まり、現場の対応力不足が課題。
- 不妊治療支援がある職場には73%が「魅力を感じる」と回答。
ここからは私(YUu)の感想や意見です
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「理解しているつもり」の企業への警鐘
今回の調査で最も注目すべきは、企業側の「理解している」という回答が75%もあるのに、従業員の実感が27%しかないという点です。これは、企業が「制度を作ったから」「福利厚生があるから」と満足してしまい、現場の運用や空気感まで目が届いていないことを示唆しています。不妊治療は、急な通院や体調不良が頻発する、非常に「予測不能」なライフイベントです。単なる制度の整備だけでなく、一人ひとりの状況に寄り添う「運用の柔軟性」が欠けているのではないでしょうか。
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日本の「言えない文化」をどう変えるか
日本で43%もの人が誰にも言わずに治療を続けているという事実は、胸が痛みます。グラフ2(職場での治療開示状況)で見られるように、半数近くが孤独に戦っています。これは「周囲に迷惑をかけたくない」という日本人の美徳の裏返しでもありますが、その結果として84%もの人がメンタルヘルスに影響を感じている(グラフ3)のは、あまりに過酷です。職場が「個人的なことだから」と切り捨てるのではなく、「大切な仲間の人生の一部」として受け入れる文化を醸成することが、結局は離職を防ぎ、強い組織を作る近道なのだと痛感しました。
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管理職への教育こそが「特効薬」
不妊治療を打ち明ける相手のトップが「直属の上司」である以上、その上司が「不妊治療とはどういうものか(身体的・精神的負担、スケジュールの不確実性)」を知っているかどうかで、部下の人生は大きく変わります。研修を受けている企業が2割以下という現状は、あまりに少なすぎます。管理職が「特別な配慮」を「負担」と感じるのではなく、「チームの持続可能性を高めるためのマネジメント」として捉えられるよう、企業は教育に投資すべきです。
読んでくださっている方へ
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さいごに短い注意書き
この記事は、公開されているニュース記事をもとに、私(YUu)が個人的な立場から内容を整理・要約したものです。実際の治療や制度の利用については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。