治療のガイドブック【第1章】

【第1章】 悩む前に、まずは「お互いの体」を知ることから

はじめに: 「不妊」って、特別な病気ではありません

「赤ちゃんが欲しいな」と思って避妊をやめてから、1年経っても妊娠しないこと
医学的には、これを「不妊(ふにん)」と呼んでいます。

でも、この言葉に傷つく必要はありません。「子供ができない体」と決まったわけではなく、「妊娠しにくい原因が、どこかにあるかもしれないから、ちょっと調べてみよう」というサインに過ぎないからです。

風邪を引いたら内科に行くように、なかなか授からなかったらクリニックに行ってみる。
まずはそのくらいの、軽い気持ちでスタートラインに立ってみましょう。

■ ここで大切な事実: 原因は女性だけではありません

昔は「子供ができないのは女性のせい」なんて言われた時代もありましたが、それは大きな間違いです。
WHO(世界保健機関)の調査によると、実は「約半分のケース(48%)は、男性側にも原因がある」のです。

41% 女性のみ 24% 男女とも 24% 男性のみ 11% 不明

※WHO(世界保健機関)の調査に基づくデータ

不妊治療は、女性ひとりが頑張るものではなく、「ふたりで取り組むプロジェクト」です。最初は勇気がいるかもしれませんが、ぜひパートナーと一緒に検査を受けてみてください。

1. 最初に受ける「3つの基本検査」

「病院に行ったら、いきなり痛いことをされるんじゃ…」と不安になりますよね。
でも、最初のステップは「自分の体の現状を知ること」です。まずは、この3つの検査から始まります。

① 卵子の数チェック 「AMH(エーエムエイチ)検査」

女性の卵子は、生まれた時に数が決まっていて、年齢とともに減っていきます。新しく作られることはありません。
この検査では、採血(血液検査)だけで、「卵巣の中に、あとどれくらい卵子が残っているか?」の目安を知ることができます。

年齢ごとの卵子の数のイメージ

20代 多い 30代 普通 40代 少ない

※年齢とともに数は自然に減っていきます

② 通り道のチェック 「卵管造影(らんかんぞうえい)検査」

卵子が通る道(卵管)が詰まっていないかを調べる検査です。
もしここが詰まっていると、どんなに元気な精子が来ても、卵子と出会うことができません。

  • 方法: 造影剤という液体を流して、レントゲンで撮影します。
  • メリット: 実は、この検査をした後は「卵管の通りが良くなる」ため、ゴールデン期間(妊娠しやすい期間) と呼ばれることもあります。

③ 男性のチェック 「精液(せいえき)検査」

男性側の検査は、とてもシンプルです。精液の中に「元気な精子がどれくらいいるか」を顕微鏡で数えます。

顕微鏡のイメージ
  • 数: 精子の数は十分か?
  • 運動率: 元気に泳いでいるか?(止まっていないか?)
  • 形: 正常な形をしているか?

2. 「年齢」という壁について、正直にお話しします

少し耳が痛い話かもしれませんが、とても大切なことなのでお伝えします。
今は30代、40代で出産される方も増えていますが、生物としての体の仕組みは昔と変わっていません。
一般的に、35歳を過ぎると卵子の質が下がり始め、妊娠率が少しずつ低下し、流産率が上がっていく傾向にあります。

年齢による変化のイメージ

20歳 30歳 35歳 40歳 45歳 妊娠しやすさ 流産率

※35歳頃を境に、曲線が変化しやすくなります

だからこそ、「いつか欲しいな」ではなく、「今すぐ検査だけ受けてみる」という行動が、将来のあなたを助けることになります。

まとめ: 焦らず、でも確実に

第1章では、まず「敵を知り、己を知る」ための検査についてお話ししました。

  • 不妊は女性だけの問題じゃない(二人三脚で!)
  • まずは「AMH」「卵管」「精液」の3つをチェック
  • 年齢は待ってくれないので、早めの検査が吉

基礎がわかったら、次は具体的な治療の流れを見てみましょう。

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